プロポーザル採択されず

論文が掲載されて浮かれてたら、数日後、去年の11月に出した研究プロポーザルの不採択の通知が来た。この類のメールの書き出しは、「I regret to inform you that … (残念ですが、…)」これだけでも衝撃が大きいのに、自分のプロポーザルの評価がFairとGoodしかない低評価で、これの方がかなりショック。レビューの内容を今は見る気になれないから、数日置いた後にするか。去年の夏に終わったプロジェクトを継続するための研究資金になる予定がなくなり、プロジェクトが立ち消えになってしまう可能性が大。念の為、もう一つプロポーザルを別のところに出していて、それが採択されなければ、終了かも。研究プロポーザルは、1つ外れると、今後、全く採択されなかったら?!とかネガティブな思考に陥ってしまい、精神衛生上良く無い。そうなら無いように、レビューを見返し、論文を書いて、新たなプロポーザルを書くのみ。

久しぶりに外食した。シーフードを売りにしているレストランでフィッシュアンドチップス。大きめのタラのフライとポテト、タルタルソースとモルトビネガー、イギリスの定番料理やけども、アメリカで食べてもハズレがなく、ここのレストランでも美味しい。

論文受理+掲載、卵の値段

論文を再投稿したのは月曜日。なんと2日後の水曜日には受理された。どうやら再投稿した後に、査読者に再審査されることなくエディターの判断で受理になった模様。再審査の審査の早さが左右されたかは不明だが、今回の論文はオープンアクセスにしてみた。オープンアクセスとは、論文雑誌を購読していなくても論文が無制限に公開される仕組み。ただ、掲載料を取らない雑誌(ジャーナル)でも、オープンアクセスにするにはなかなか高額な費用がかかる。自分の目論みとしては、オープンアクセスにすることで引用数の伸びや他への影響がどのぐらいあるのか知りたい。後、研究費をサポートしてくれている政府系機関は、オープンアクセス論文を推奨している。少し研究費に余裕がある時にのみ出来ること。論文は、以下からダウンロード可。続編を数ヶ月以内に投稿したいところ。

Ultrafast time-resolved 2D imaging of laser-driven fast electron transport in solid density matter using an x-ray free electron laser

今年に入ってから卵の値段がやばい。以前は12個入りで2ドルぐらいだったものが、インフレと鳥インフルエンザの影響で今や5ドル近く。金利もさらに上がり、アメリカ経済は安定するのかどうなのか。核融合研究は、金利とは関係なく、去年の年末のブレークスルーによりバブル気味。2月に1つ研究プロポーザルを出して、4月にももう1つ出す予定。当たりますように。

日本(語)での学会発表

25分の招待講演は良さげな感じで終了。無事に終わってホッとしたのうまく伝わったか気になったかな。ただ、楽しめた感はあった。次も呼ばれたら参加しようかな。

3日間の学会・シンポジウムに参加して思うことは、今回の学会に限らず、発表後に誰も質問しない。セッションによっては、発表が終わった後の拍手もなかったり。10年ほど前に、日本での別の学会に参加した時も同じ様子やった。ご飯時に大学教員の知り合いに話しを聞くと、授業でも学生からの質問、発言はないっていうから、まぁ、学会でいきなり話すのは難しいかな。正味、学生が発言しないっていうより、現役の研究者・学会参加者の誰も発言してないような。なんか学会で集まる意味すらあるのかとも思える。日本人って括りでみると、協力して何かすることを得意としない人種かと思ってて、その辺がもろに出てる感じ。誰もが盛り上がってないのを分かった上で、何もしない感じ。学生・若手研究者に、「もっと発言して良いんやで」って言うてあげたい。

某テレビ番組で「本来、大人の仕事って、若い人にリラックスしてもらって、(活躍する場を提供することも1つなんじゃないかな)」って言ってるのを見て、その通りな気がする。現在、中堅の研究者真っ只中な自分としては、自分の研究を進める+若手の育成っていう両方を推し進める必要がある。とりあえず、その学会では色々発言したけど、まぁ、「あいつうるさいなぁ」「黙ってれば早く終わるのに」とか思われてたのかなぁ。まぁ、ええけど。

学会のため名古屋に移動

今回の一時帰国の目的は7対3ぐらいで仕事多め。石垣から大阪に移動して5日ほど仕事、その後、名古屋で3日間の学会に参加。今年初の招待講演でしかも日本語での発表なので、準備はしっかり目に。なぜなら、日本語での発表がおそらく10年ぶりぐらい、日本語発表の招待講演は初めてで、緊張する。まずは英語の発表資料をすべて日本語に直して、さらに発表しやすいように詳細を変更。知り合いの研究者の人に日本語での学会発表、資料についてアドバイスをもらい、あとは発表練習をするのみ。一つ学んだことは、この余計なところが削ぎ落とされた日本語の資料を英語に戻すと、元の英語の資料よりもかなり改善されたものになりそう。なるほど。

新大阪から名古屋へは新幹線で1時間ぐらいなので、のぞみ、ひかり、こだまでも何でもいいけど、スーツケースみたいな大きい荷物(特大荷物)は予め荷物が置ける座席の切符を購入する必要があるらしい。以前は「自由席の切符を買って、足元のスペースに置いといて良い」ってみどりの窓口で言われたのに、ルールが変わったのかな。しかし、この切符、オンラインで買えるけど受け取れないようので、やはり、みどりの窓口へ。荷物が置ける席はまぁまぁ埋まっていて、駅に着いた時間から30分ほど遅い発車時間のものを購入して乗り込む。まぁ、空いてる。パソコン開いてちょこちょこ作業してたらあっという間に名古屋。

本日からのお宿は、名古屋JRゲートタワーホテル。駅に直結でスーツケースを引き摺る距離が短いということで選択。なかなかな眺め。残念ながら名古屋城は反対側。

研究プロジェクトの終了(NSF)

2017年9月から始まった自分の研究プロジェクト(リンク)が今年の夏で終了した。このプロジェクトは、初めて自分がPrincipal investigator (主任研究員)として始動したものでかつ、自分の名前で研究費(3年で$330,000)を獲得したもの。研究費はアメリカ国立科学財団(National Science Foundation, NSF)に出したプロポーザルで獲得。地道に日々研究を続け、毎年、6、7月ごろに年間の報告書を提出。プロジェクトを1年延期したところでコロナ禍になり、さらに1年延長。ついにこの夏にお金が尽きて終了。プロジェクトが終了すると、年次報告以外にそのプロジェクトの総括と一般向けにどういう成果が得られたかのまとめ(outcomes)が必要で、12月の半ば、やっと全ての報告書を出し終え、このプロジェクトは完全終了。

振り返ってみると、論文は学生主体のものが2本に、自分のが3本の計5本出せた。学生の奨学金として博士の学生を2人、あと学部生の研究補助として5人ぐらいがプロジェクトのサポートを受けたかな。始めた当初は、お金をもらって研究してるから結果を出さねばというプレッシャーが大きかったけど、意外と自由な感じに研究させてもらえるんやなと。例えば、当初予定していた実験施設がプロジェクトの2年目辺りで閉まることになり(のちに再開)、その際、プロジェクトマネージャーに相談したところ、研究目的を達成することが最重要なので、他の実験施設を使うこともアリやと提案をしてくれた。別の機会には、メインの研究テーマから派生したスピンオフ的な研究を進めるのも応援してくれたり。後々、学んだのは、研究費にも種類があって、いわゆるGrant(グラント)っていうのは、研究提案、手法を細かく申請書に書くものの、状況によって生じる変更が比較的簡単。それに対して、corporate agreement(契約)っていうカテゴリのものは、提案した通り、そのままに進める必要があるらしい。変更可能ではあるものの許可を得るのは手間がかかる。少し前に準備してたプロポーザルはこのプロジェクト(グラント)の更新の申請。さて、評価は如何に。

たまにハンバーガーが食べたくなる。我が家の行きつけの1つは、Five Guys。普通のハンバーガーが大きめなので、小さめのLittle Cheese Burgerとフレンチフライ。たまに塩気がキツすぎることがあるけど、ここのポテトはなかなか。あと、店内で食べる場合は、ピーナッツがテーブルに置いてあって食べれる。

レーザー核融合実験のビッグニュース:サイエンティフィックブレークイーブン達成(2022/12)

以前、レーザーを使った核融合研究に関するビッグニュースが発表されたのは2020年の8月。その時は、核融合反応で生成されたエネルギーが反応を起こさせるために使ったエネルギー(レーザー)の約70%に達成したとのこと。今日、午前10時からの記者会見で、リバモア国立研究所で12月5日行った実験で、核融合反応によるエネルギーが、レーザーの入力エネルギーを超えたとの発表があった。数日前からすでに報道されてて、なんとなくそのニュースかとは思ったけど、会見の中ではレーザーのエネルギーが2.05 MJに対して、3.15 MJの核融合エネルギー(中性子)が生成されたと、具体的な数字を出してた。指標となる出力と入力のエネルギー比、ゲイン G、はG = 1.54で、サイエンティフィックブレークイーブン(scientific breakeven)と呼ばれるG=1を歴史上初めて超えた。4,5年前まで、G~0.01とか0.02ぐらいしか出てなかったことを考えると、地道に実験条件を変えて臨んできた研究者達の努力の成果が報われて自分も嬉しい。研究分野的には大大大ニュースやけども、普段聞いてるニュース(例えば、NewYork TimesBBCニュースNPR)とかでも大きく取り扱われている。研究が始まって長年(〜60年)待ち望まれた目標達成やからもあるけど、アメリカが成し遂げた大きな成果という国民全体が誇れるように報道を持っていってるのはさすが。莫大な研究資金は税金であることを忘れてないのは大事。

核融合研究のブレークスルーのニュースが出ると、「核融合発電はいつ出来るのか?」という議題になるのは常。どのニュースでも報道してるように全然近くはないけど、核融合発電の研究・開発への投資が増大して、研究のペースが進むのは間違いない。すでにAmazonとかMicrosoftとかが何百億円っていう投資をしてて、この成果を受けて政府がどこまで研究資金を増やしてくれるかが個人的には気になる。もう1つは、実験で使われたレーザーとほぼ同じレーザーがフランスにもあって、そこでも同じような実験結果が出るか気になる。科学実験は、実験条件が同じであれば誰が行っても同じ(似たような)結果が出るはず、それが出来なければ核融合発電とかには到底辿り着けない。研究の成果は記者会見で発表されただけであって、論文としてはこれから発表されるらしい。ある政府関係の人は、「査読された論文を出してからや」みたいなコメントを出してた。それは最もで自分も気になるところ。

今回の研究結果については、記者会見、その後の専門的な質疑応答の動画がYoutubeに上がっている。日本語の方は、下の動画が分かりやすい。

プロポーザルをいくつか

学会が終わってから、2週間おきぐらいの研究提案プロポーザルの締め切りに追われた。研究費の獲得のためと実験施設の時間の確保のためのもの(計3つ)。どれもそこそこの量の文章を書く必要があるのと競争率が高いため、簡単にいうと”しっかり”書けてないと競争相手らに勝てない。”しっかり”の部分は、研究費のための申請書なのかビームタイムのための申請書によるかで変わってくるので、その辺りも頭を切り替えて書く必要がある。幸い、どちらも何度か獲得したことがあるので、傾向と対策は可能ではあるものの、それらを遂行する時間がない。プロポーザルを書きながら授業の準備、授業、オフィスアワー、自分の学生らとのミーティング、いっぱいいっぱい。11月後半にあるサンクスギビング(感謝祭)までは多忙な日々が続きそう。

ある日、廊下で他の教授と立ち話をした時に「学会で見なかったけど、行ってた?」みたいな会話から、話が転がりその人が選考委員になってる学会の招待講演者を探してるらしくて、自分に話が来た。「秋の学会の招待講演で発表したよ」っていうと、なおさら「ちょうどええやん」ってことで、年末のリモートの会議で発表決定。自分としては研究内容、名前を売る機会が欲しかったから有り難い。これも修行ということで努力が必要。

紅葉になったり、雪が降ったり、季節の変わり目。

行動規範 (code of conduct)

学会(APS)中にふと気になったことの1つに、セッション開始前に頻繁にCode of conduct (行動規範)の案内が出されていた。APSのcode of conductは下にコピーしたようなもの(DeepL Translateで訳したものを追加)。「学会参加者、関係者は、差別、嫌がらせ、報復もなく、すべての参加者を歓迎し、プロフェッショナル な態度で行動することが求められる」とある。もちろん前々からcode of conductはあるけど、今年に限って念を押す感じは、去年何かあったか新しい学会コミッティーの方針か、ともかく、当然と言えば、当然のこと。ちょっとした言い合いは目撃したことはあるけど、罵るとかはあり得ない。

学会に参加するたびに、二十数年前、大学4年生で初めて参加させてもらった学会のことを思い出す。自分の発表にも緊張していたし、研究者になりたかった自分には多くの研究者が集まって議論する”学会”っていう響きに飲まれていたのもある。そこで目にしたのは、学生の発表をこき下ろすシニア研究者の姿。APSのcode of conductにあるような敬意と配慮なんかは全くない。自分の発表では、特に攻撃されはしなかったけど、1度じゃなく、何度も学生発表者への厳しいダメ出しが続き、聴衆にいる指導教官が助け舟を出す感じ。セッションの空気はどんより。

それ以来、日本の学会にはほぼ参加していないが、近々、日本で主催される学会に参加予定で、どう変化を遂げたか、その様子は楽しみではある。

Code of Conduct for APS Meetings

It is the policy of the American Physical Society (APS) that all participants, including attendees, vendors, APS staff, volunteers, and all other stakeholders at APS meetings will conduct themselves in a professional manner that is welcoming to all participants and free from any form of discrimination, harassment, or retaliation. Participants will treat each other with respect and consideration to create a collegial, inclusive, and professional environment at APS Meetings. Creating a supportive environment to enable scientific discourse at APS meetings is the responsibility of all participants.(米国物理学会(APS)の方針として、APS 会議の出席者、業者、APS スタッフ、ボランティア、その他関係者 を含むすべての参加者は、いかなる差別、嫌がらせ、報復もなく、すべての参加者を歓迎し、プロフェッショナル な態度で行動することが求められる。参加者は、APS 会議において同僚的、包括的、かつ専門的な環境を作り出すために、互いに敬意と配慮を持って接する。APS 会議において科学的な議論を可能にする支援的な環境を作り出すことは、すべての参加者の責任で ある。)

Participants will avoid any inappropriate actions or statements based on individual characteristics such as age, race, ethnicity, sexual orientation, gender identity, gender expression, marital status, nationality, political affiliation, ability status, educational background, or any other characteristic protected by law. Disruptive or harassing behavior of any kind will not be tolerated. Harassment includes but is not limited to inappropriate or intimidating behavior and language, unwelcome jokes or comments, unwanted touching or attention, offensive images, photography without permission, and stalking. (参加者は、年齢、人種、民族、性的指向、性同一性、性表現、配偶者の有無、国籍、政治的所属、能力の有無、学歴、その他法律で保護された特性などの個人の特性に基づく不適切な行動や発言を避けなければならない。いかなる種類の破壊的またはハラスメント行為も容認されません。ハラスメントには、不適切または威圧的な言動、好ましくないジョークやコメント、不要な接触や注目、不快な画像、許可なしの写真撮影、ストーキングなどが含まれますが、これらに限定されるものではありません。)

Violations of this code of conduct policy should be reported to meeting organizers, APS staff, or the APS Director of Meetings. Sanctions may range from verbal warning, to ejection from the meeting without refund, to notifying appropriate authorities. Retaliation for complaints of inappropriate conduct will not be tolerated. If a participant observes inappropriate comments or actions and personal intervention seems appropriate and safe, they should be considerate of all parties before intervening. (この行動規範のポリシーに対する違反は、会議の主催者、APS スタッフ、または APS Director of Meetings に報告する必要があります。罰則は、口頭での警告、払い戻しなしの会議からの退出、関係当局への通知など多岐にわたります。不適切な行為に対する苦情に対する報復は許されません。参加者が不適切な発言や行動を観察し、個人的な介入が適切かつ安全と思われる場合は、すべての当事者に配慮した上で介入してください。)

ワシントン州スポケーン(散歩写真)

学会を少し抜けて会場付近を散策。ちょっと遠かったけど、バスケで有名なGonzaga University(ゴンザガ大学)があって、街の中心には大きい滝がある。しかも、その縁から滝壺が見えるようにゴンドラが動いてる。大きいデパートもあったりして、不思議な街。

論文投稿

学会のため向かったワシントン州スポケーン初日に、論文を投稿。学会の発表資料に「現在、論文を投稿中」って書いて、後がない状況にして進めた結果、当初の予定通り、学会が始まる前に投稿できたことに大満足。今年は自分のグループの論文に加え、共著者になってる論文も精力的に加筆・修正を加えて、よく書き物をしている。投稿した論文は、3週間ほどの査読期間の後、査読者のレビューコメントが返ってくる予定。その間に、プロポーザルの締切が2つばかり。その後、論文の直しをしながら、別の論文を形にしてと、頭の中で予定は立っているものの、授業等もあるし、さて、どこまでできるか。

研究発表も然り、論文を書くとなると、今までの研究との繋がり、対比、研究の新規性等、論理の筋道がはっきりして良い。逆にこの辺りの道筋が見えてないと文章を書いた時に何が言いたいのかがわからないものになる。特にお金をもらって研究をしていると、目に見える結果を出す必要がある。結果の1つとして、論文の進捗を図る段階(1. 論文を準備中、2. 投稿中、3. レビュー中、4. 受理された、5. 掲載された)で、投稿中はなかなか良い。研究結果を得るのも一苦労やけど、結果を論文の形にする能力もまた研究者としては重要。