中高生の自由研究課題になりそうなもの

教えるようになってから、子供の頃に親しんだ「学研の科学」のような実験課題がインターネット上に溢れていることに気づいた。例えば、American Journal of Physicsっていう学術雑誌に、3Dプリンターを使って自分でパーツを作ったり、Amazonとかで簡単に買えるようなものを使って物理実験をする内容のものがちょこちょこ載っている。春セメスターに「光学(Optics)」を教えていることもあって、授業の内容に沿っていて紹介できるものを探していたところ、偏向(Polarization)に関する論文「Optical measurements on a budget: A 3D-printed ellipsometer」を見つけた。Ellipsometerは薄膜からの反射を計測することで薄膜の厚さ、表面の荒さ、屈折率などの光学特性を調べるもの。特に、光学、半導体業界で使われているものらしいが、高額なため学校の実験等では見かけない。そこで、この論文では、低コストで手動式のEllipsometerの作成方法とその性能、さらに元となる物理の理論も含めて紹介している。ざっくりいうと、学生の夏の自由研究としてちょうど良いんではないかな。内容が全部わからなくても、頑張れば中学生でも再現は出来そう。価格は1万5千円ぐらい。

必要な知識としては、光の偏向、反射。例えば、レーザー光が薄膜にある角度で照射された際、どのぐらいの反射率になるのかとか位相の変化はどうなるのか。また、一番簡単な2つの光の干渉ではなく、全ての反射光を考慮した位相を考える必要があって、ちょっとややこしい。さらに、偏向を数値的に記述するために、Jones Vectors, Jones Matrices、Stokes parametersを使ってる。難しくはないけど、中高生には馴染みがないかも。課題としてやるなら、(1)英語の原文を読むこと、(2)実際に作ってみること、(3)結果の再現性、(4)考察、(5)まとめと展望、という感じかな。研究者の訓練としては良いかも。

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